没後40年 熊谷守一 生きるよろこび

明治、大正、昭和を生きた画家、熊谷守一(1880~1977)。関東大震災、日中戦争、太平洋戦争、東京オリンピック、大阪万国博覧会…激動の時代を生きながら、一貫して「絵を描く」ことを突き詰めた生涯でした。守一の70年以上に及ぶ画業を約200点の作品で振り返る展覧会が、東京国立近代美術館で開催されています。
<会期:2017年12月1日(金)~2018年3月21日(水)>

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熊谷守一というと、シンプルな線と色面で、身近な植物や昆虫、動物を描いた晩年の作品を思い浮かべます。守一の終の棲家となった豊島区の家。1932年、52歳のときに移り住んだその家の庭には、自ら掘った池もあり、緑が生い茂っていたといいます。庭に座り込み、虫や花を科学者のように観察して生まれた作品は、独自の視点に満ちています。「蟻は左の2番目の足から歩き出す」ことを発見したほど、「見る」ことに徹したのです。おおらかでユーモラスな印象だけではくくれない魅力があります。

展覧会は、年代順に構成されており、あまり見る機会のない、初期の作品も見ることができます。1904年に東京美術学校西洋画科を主席で卒業した卒業制作「自画像」や、本当に蝋燭(ローソク)を灯した光で人物を描いたという「蝋燭」(1909)。茶色く落ちた色調の写実的な作風は、同一人物の作品とは思えないほど。

結婚後、貧困生活の中で子供を相次いで亡くし、次男の陽が4歳で死んだ姿を描いた「陽の死んだ日」(1928)。悲しみの厚さほど、絵の具を荒々しく塗り重ねた激しい表現を見ると、晩年の作風は、守一がさまざまな困難を生き抜いた結果、たどり着いた表現だと気づかされます。ひたむきな生き方をも追体験できる展覧会です。

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東京国立近代美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

北斎とジャポニスム

19世紀後半、日本の工芸品等の文物がヨーロッパに大量に輸出され、人気を博しました。インテリアとして飾られただけでなく、西洋の芸術家に刺激を与え、新たな表現を生みだすきっかけとなったといいます。モネの「ラ・ジャポネーズ」(1876)には、うちわが飾られた壁の前に着物をまとった妻カミーユが描かれていますが、そのままのかたちで絵画に描かれただけでなく、人物のポーズや絵画の構図にも影響を与えています。

中でも最も注目されたのが、浮世絵師、葛飾北斎(1760~1849)。国立西洋美術館では「北斎とジャポニスム」と題し、モネ、ドガ、ゴーガンなどの絵画と、北斎の錦絵、版本を比較しながら鑑賞できる展覧会が開催されています。
<会期:2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)>

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いわく、当時日本から輸入された有田焼の緩衝材に無造作に使用されていたのが、北斎漫画であったとか。人々は有田焼ではなく、北斎漫画の方を称賛したそう。以降、絵画から版画、彫刻、ポスターなどかずかずの分野に影響を与えていきます。

北斎漫画の腰に手をあてて休憩する力士のポーズは、ドガの描く踊り子のポーズに。大きな袋をクッションがわりに寝そべる布袋は、メアリー・カサットが描く、肘掛け椅子にふんぞり返る少女のポーズに。きどった美しいポーズではなく、北斎の描くくつろいだユーモラスなポーズが新鮮だったのでしょうか。

北斎の代名詞ともいえる富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の波の造形も斬新だったのでしょう。絵画だけでなく、カミーユ・クローデルの彫刻「波」や、立体的な陶器のモチーフにもなっています。

西洋では花は花瓶にいけたかたちで描かれていたそうですが、北斎は、地に根を張った自然のままの姿を描きました。画面一面に描かれたゴッホのばらや、モネのアイリスにその影響がみられます。

他にも、北斎の幽霊画にインスピレーションを得たルドンや、ヘラクレスの背景に描いた崖の表現を北斎から引用したモローなど、1点1点が北斎と並べて展示されているため、とてもわかりやすく比較できます。ジャポニスムを読み解くのに最適な展覧会です。

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国立西洋美術館

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ピカソとシャガール 愛と平和の賛歌

スペイン出身のピカソ(1881~1973)と、白ロシア(現ベラルーシ共和国)出身のシャガール(1887~1985)は、どちらもパリを拠点に活躍したエコール・ド・パリの画家。ポーラ美術館開館15周年を記念して、二人の作品約80点を並べて展示するというユニークな展覧会が開催されています。
<会期:2017年3月18日(土)~9月24日(日)>

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シャガールといえば、空に浮かぶ恋人たちのモチーフが思い浮かびます。妻ベラへの愛が感じられますが、もうひとつ忘れてはならないのが、故郷ヴィテブスクへの愛。イズバと呼ばれる丸太小屋や、人と動物がともに生きる風景。ヴィテブスクの空の上を、恋人たちが飛び、上下に切断された男性の頭部も浮かびます。ナチスにより破壊された悲しみの情景としても描かれました。

ピカソも愛する家族を描いていますが、ひし形や山形の面を集めたプリズムのような表現や、複数の視点からとらえた人物像とし、技法をこらしています。ふたりの作品を見比べられる面白さが本展の醍醐味です。

また、ユダヤ人であったため、ナチスを逃れてアメリカに亡命したシャガールと、戦争という不条理に抵抗するため、パリに住み続けたピカソ。ふたりの平和への願いが込められた巨大なタペストリーも見逃せません。ピカソとシャガールが信頼を寄せたタペストリー作家の手によるものです。

シャガールの「平和」は、ニューヨーク国連本部の記念講堂に設置されたステンドグラスの下絵に基づいて制作され、ブルーの背景いっぱいに、動物たちと人間が描かれています。ピカソの「ミノタウロマキア」は、牛頭人身の怪物ミノタウロスが人々を襲う場面が描かれ、その恐怖が第二次世界大戦への不安と重なります。

ともに長寿で多作。ふたりの巨匠と対峙する贅沢な空間が広がっています。

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ポーラ美術館

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ブリューゲル「バベルの塔」展

かつて人類は同じ言葉を話し、一致団結して天まで届く塔を作ろうとした。神の領域を侵そうとするその野心は神の怒りに触れ、神は、人々の言葉をバラバラにして意思の疎通をできなくし、塔の建築を阻止したー。人間の思い上がりを戒めるとともに、さまざまな言語がなぜ存在するのかも示す、旧約聖書「バベルの塔」の逸話です。

バベルの塔を描いた絵画は数多く存在しますが、ピーテル・ブリューゲル1世(1526/30~69)の「バベルの塔」(1568)は、壮大かつ細密。ロックアルバムのジャケットにしたい程のスタイリッシュさが心をとらえます。この「バベルの塔」を中心に、16世紀ネーデルラント絵画約90点を、東京都美術館で見ることができます。
<会期:2017年4月18日(火)~7月2日(日)>

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「バベルの塔」の第一印象は「想像より小さい」ということ。59.9×74.6㎝の画面いっぱいに、建設中の塔が雲を突き抜けてそびえています。上部のれんがは赤いものの、下部のれんがは白く色あせ、建設が始まってからの膨大な年月が感じられます。目をこらすと、塔の建設に勤しむ無数の人々が蟻のように描きこまれ、一説には、その数1400人とも。

塔の左に見える赤と白のラインは、赤はれんがを、白はしっくいを滑車で引き上げた跡。しっくいをかぶって、真っ白になった人も働いています。クレーンなどの重機は当時使われていた機械が正確に描かれているとのことで、ブリューゲルの観察の賜物と思われます。

塔の右は海に面していて、左には田園風景が広がっています。水平線までの遠景が描かれており、壮大さを感じさせる一因に。会場には、作品を3倍に拡大した複製画も展示されていますが、まったく描写が崩れていません。超絶技巧に脱帽します。

もう一人、ネーデルラント絵画の巨匠とされるのが、ヒエロニムス・ボス(1450~1516)。ブリューゲルの現存する油彩作品は40点ほどといわれますが、ボスはわずか25点。そのうちの2点が展示されています。

娼館の前を通り過ぎる旅人を描いた「放浪者」(1500頃)。後ろ髪ひかれるようにも見える旅人は、猫の毛皮とスプーンを背負い、なぜか、ブーツとスリッパを片方づつはいています。常に誘惑との選択をせまられる人生の寓意とのことですが、奇妙な絵です。

キリストを背負って川を渡る聖人を描いた「聖クリストフォロス」(1500頃)も、花瓶の中の小人や吊るされたクマ、廃墟のモンスターなど、不思議なモチーフが満載。ネーデルラントの奇想の画家との出会いも楽しい展覧会です。

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東京都美術館

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大エルミタージュ美術館展

帝政ロシアの都、サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館は、約310万点の美術品を所蔵し、絵画作品だけでも17000点に及ぶ世界有数の美術館。1764年にエカテリーナ2世が取得した317点の絵画が基礎となっており、当時、鑑賞できるのは親しい人に限られていたとか。「エルミタージュ」が、フランス語で「隠れ家」という意味であることもうなずけますね。

今回、森アーツセンターギャラリーで開催されている展覧会は、特に充実しているといわれる、16~18世紀のルネサンス、バロック、ロココ期に活躍した「オールドマスター」と呼ばれる巨匠たちの作品がテーマとなっています。会場入り口に展示されているエカテリーナ2世の肖像画に迎えられ、西洋絵画の世界を旅してみましょう。
<会期:2017年3月18日(土)~6月18日(日)>

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展示会場は、イタリア、オランダ、スペイン、と国別に構成されています。イタリアは、ティツィアーノ(1488~1576)に代表される、白くなめらかな肌を持つふくよかで気品ある女性像や、ヴィーナスや聖母子など、神話や宗教画が多い印象。

オランダは、市民の肖像画や風景画、静物画など現実の世界をモチーフとした作品が。ヤン・ダーフィッツゾーン・デ・へーム(1606~1684)「果物と花」(1655)には、みずみずしい果物と花だけでなく、しおれたバラの花や蛇や昆虫なども描かれ、“はかない生”という寓意も感じられるような。

フランドルは、ダーフィット・テニールス(2世)(1610~1690)「厨房」(1646)が印象的。厨房にあふれるさまざまな種類の鳥や魚に、図鑑的な面白さが感じられます。図鑑的といえば、フランス・スネイデルス(1579~1657)「鳥のコンサート」(1630~1640年代)も譜面を広げたふくろうを筆頭に、孔雀、オウム、鷲、コウモリ、白鳥やさまざまな小鳥たちが見事に描きわけられています。静物描写に才能を発揮した画家なのだそうです。

スペインの宗教画は、聖書の話を現実のエピソードとして理解したとのことで、ムリーリョ(1617~1682)「受胎告知」(1660)のマリアは美少女のよう。そしてフランスでは、木々の下に集い語らう男女を描いた、ニコラ・ランクレ(1690~1743)の優雅な雅宴画や、廃墟の画家ユベール・ロベール(1733~1808)の作品が堪能できます。

最後のセクション、ドイツ・イギリスでは、メインビジュアルになっているクラーナハ(1472~1553)「林檎の木の下の聖母子」(1530)をぜひ。細く切れ長の目ととがった顎が特長的なクラーナハの女性像そのもののマリア。そして、クラーナハの描くヴィーナスと同じ透明なベールが、頭と首にかけられていることにも注目です。

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充実の作品群は85点。どんな旅になるでしょうか。

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森アーツセンターギャラリー

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