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ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展

金髪の女性が赤の打掛をまとって、扇子をかざし、振り返りざまに微笑んでいる。足元にはござを敷き、背景には鶴や花魁をあしらった団扇が。展覧会のメインビジュアルである「ラ・ジャポネーズ」(1876)は、第2回印象派展に出品されたモネ(1840~1926)の大作です。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、西洋では、浮世絵や工芸品などの日本美術が注目され、芸術家たちに大きな影響を与えました。巻き起こった「ジャポニスム」に焦点をあて、絵画、版画、工芸など約150点を紹介する展覧会が、世田谷美術館で開催されています。
<会期:2014年6月28日(土)~9月15日(月)>

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日本美術には、自然を細やかに観察し、精緻に美しく表現するという特徴があります。西洋の芸術家たちは、そのことに感嘆し、日本においては、芸術が生活にとけこんでいると信じたといいます。植物や鳥など日本美術のモチーフは、西洋の絵画だけでなく、食器や陶器などにも用いられました。ティファニー工房のデスクセットには、日本の着物の型染に用いる型紙のデザインが取り入れられています。

パリの都市生活や風景を描いた絵画の中にも、構図や描写に浮世絵の影響が見られます。手前に大きな対象物をクローズアップして描き視界を遮りながら、小さく遠景を描いて遠近感を演出する手法、また、柱や木の幹が上下に貫通して画面を分割する構図、そして、対象物を画面にはめ込んだような平面的な構成。会場では、もとになった浮世絵とその影響を受けた西洋絵画が並んで展示されているため、とてもよく理解できます。

ムンク(1863~1944)「夏の夜の夢(声)」(1893)は、女性の背景に、水面や緑の草地が水平方向に描かれ、縦方向に木々が画面を分割。遠くに小さく描かれたボートが、浮世絵の遠近法を彷彿とさせます。歌川広重(1797~1858)「名所江戸百景 神田明神曙之景」(1857)が着想源に。

モネ「積みわら(日没)」(1891)は、なんと歌川広重「東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶店」(1833頃)が下敷きに。積みわらも茶店も画面右に寄せられており、あいた空間に、帯状に地平が描かれています。他にも、人物の顔を大写しにしデフォルメした「大首絵」の影響を受け、身体的特徴を強調した肖像画や、たらいで子どもを遊ばせる情景や鯉のぼりなど、モチーフそのものが浮世絵と同一の作品も。

また、前述のモネ「ラ・ジャポネーズ」は、着物をまとったモネの妻カミーユを描いた作品ですが、当時の画家たちは日本の着物を争って買い求め、モデルにまとわせて日本趣味の作品を描いたとのこと。日本においても大正期に中国趣味が流行し、チャイナドレスをまとった日本人モデルを描いた作品が生まれました。自国の女性に、異国の着物やチャイナドレスを着せて、異国の文化を描く。キャンバスの中の小宇宙では、ふたつの美が融合し、画家を満足させたのでしょうか。

展覧会のホームページはこちらから
世田谷美術館

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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

冷たい炎の画家 ヴァロットン展

スイスに生まれ、16歳でフランスに移住。パリで活躍した画家、ヴァロットン(1865~1925)。来週、青山ブックスクールでヴァロットンのトークイベントが行われますが、「妄想-大人のたしなみとしての“変態”」と題されています。こっそり室内を覗き見たような視点、見てはいけないものを見たような不安感、胸騒ぎのする不穏な空気、どこか謎めいたクールな作風は、“大人”を魅了してやみません。約60点の油彩と約60点の版画で構成された日本初の回顧展が、三菱一号館美術館で開催されています。
<会期:2014年6月14日(土)~9月23日(火)>

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最初に迎えてくれる作品も、なんと「トルコ風呂」(1907)。アングル(1780~1867)の「トルコ風呂」(1862)に感銘を受けて描いたとのことですが、思い思いのポーズの女性たちは、ひんやりとした冷たい世界にいるかのようで、浴室の中とは思えません。犬を抱いた女性や果実を持った女性がいるのも謎で、視線の先も、いったい何を見ているのか。

バルテュス(1908~2001)が、片膝を立てた少女なら、ヴァロットンは、両膝を立てた裸婦。「肘掛椅子に座る裸婦」(1897)は、椅子にもたれ両膝を立てた裸婦が、両手をたらして眠っています。無防備なその姿は、画家の視線など知らぬげで、緑の壁と赤の椅子のコントラストがきいた空間に、奇妙な静けさが漂っています。

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「ボール」(1899)は、ボールを追う無邪気な麦わら帽子の女の子を描いているはずなのに、覆いかぶさるような木々の緑とその陰が、女の子の後ろにせまりきて、まるで喰いつくそうとしているかのよう。ふたりの女性が遠くで目を離している隙に、とんでもないことが起こりそうな緊張感が感じられます。

「貞淑なシュザンヌ」(1922)は、薄暗いピンクのボックス席で、男性ふたりと帽子を目深にかぶった女性が語らっています。旧約聖書では、長老から貞節を汚されそうになる女性とのことですが、ヴァロットンのシュザンヌはしたたかで、二人の男性を手玉にとっているかのよう。男性ふたりは禿げ上がり、頭部のハイライトが妙にリアルです。

神話を題材とした作品もヴァロットン風。「竜を退治するペルセウス」(1910)は、ワニのようで弱そうな竜を退治する、筋骨隆々で滑稽なペルセウス、そして、助けられたのは、若くも美しくもないアンドロメダというパロディです。

木版画も充実しており、「アンティミテ」(1897-98)は、覗き穴から見たようなヴァロットンの視点が、十二分に生かされた連作。ブルジョワ風の室内を舞台に、親密な男女を描いていながら、裏切りや欺瞞など妖しい緊張感が潜んでいます。描きこまれた室内装飾やドレスなどを細かく見るのもおすすめです。

ひとつひとつの作品に、想像力が掻き立てられ、さまざまなストーリーが浮かんできます。きっと、見る方によって違うはず。あなたのヴァロットンは、どんなでしょうか。

展覧会のホームページはこちらから
三菱一号館美術館

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描かれたチャイナドレス 藤島武二から梅原龍三郎まで

街中を運河が通り、「東洋のヴェニス」と呼ばれた蘇州。また、租界(外国人居留地)が存在し、「東洋のパリ」とも「魔都」とも呼ばれた上海。大正期の日本では中国趣味が流行し、文学においても、芥川龍之介や谷崎潤一郎が中国をテーマとした紀行文や小説を発表しました。1930年代にはチャイナドレスを着ることもブームであったとか。鮮やかな色彩と豪華な刺繍。女性を美しく見せるチャイナドレスには、画家たちも魅了されたようです。

1910年代から40年代にかけて日本人画家によって描かれた、チャイナドレスを纏う女性像を集めたユニークな展覧会が、ブリヂストン美術館で開催されています。
<会期:2014年4月26日~7月21日>

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作品は、日本人の心の中にある中国をイメージしたという赤の壁面に展示されています。嗅煙草を楽しむ女性を描いた、藤島武二(1867~1943)「匂い」(1915)は、油彩で最も早く描かれたチャイナドレスの女性像とのことで、グリーンの背景とピンクのドレスの対比が美しく、妖艶な雰囲気。一方、藤島の「女の横顔」(1926‐27)は、イタリア・ルネサンス期の絵画に見られる真横のフォルムの女性像。その気品あるたたずまいは、今春、Bunkamuraザ・ミュージアムで展示された、ポッライウォーロの「貴婦人の肖像」(1470頃)を彷彿とさせます。

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藤島は、絵の題材としてチャイナドレスを蒐集しており、その数は60着近いとも。また、正宗得三郎(1883~1962)は、留学の際に求めたフランスの生地で作った手製のチャイナドレスを妻に着せ、モデルにしたといいます。

児島虎次郎(1881~1929)「西湖の画舫」(1921)は、華やかな屋形船で音楽や酒宴を楽しむ中国文化を描いた作品。児島は、パリのサロンで作品を発表していましたが、東洋モチーフを描いた作品を出品していたそうです。

前述の藤島も正宗も児島も、他の展示作家である梅原龍三郎(1888~1986)もヨーロッパに留学しており、日本を含む、遠く離れた東洋の美術が西洋美術に与えた影響を目にしていたはずです。それが、東洋を見直すきっかけになったのかもしれません。また、国際都市・上海や満州は、日本からヨーロッパに旅する際の足がかりとなった地でした。日中戦争に突き進んでいくことを思うと複雑な思いにもとらわれますが、当時の人々にとっては、西洋的エキゾチシズムが味わえる、もっとも近い場所が中国だったのでしょう。

描かれたチャイナドレスには、そんな思いが凝縮されているかのようで、ドレスを纏った女性像が並んでいる様は壮観です。チャイナドレスの現物も展示されており、とても華やいだ展覧会です。

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※展示会場内の画像は特別に主催者の許可を得て撮影したものです。

展覧会のホームページはこちらから
ブリヂストン美術館

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デュフィ展 絵筆が奏でる色彩のメロディー

赤の背景に置かれたヴァイオリン。赤の中には、軽やかな線で一面に花が描かれ、壁には画中画として、デュフィ自身の花の絵がかけられている―。ポスターに使用されている「ヴァイオリンのある静物:バッハへのオマージュ」(1952)を見た時から、その明るい色彩とエレガントで流れるような線描に心ひかれました。展覧会タイトルにあるとおり、色彩のメロディーが聞こえてきそうです。

20世紀前半、ピカソやマティスと同時代に活躍したフランスの芸術家ラウル・デュフィ(1877~1953)の回顧展が、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されています。
<会期:2014年6月7日~7月27日>

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初期の風景画から晩年の音楽をテーマとした油彩、木版画、テキスタイル、陶器、家具など多種にわたる作品が展示されていますが、「電気の精」(1952~53)は、見どころのひとつ。原画は1937年のパリ万博において、パビリオン「光と電気館」の壁画として描かれた横60メートルに及ぶ大作で、現在もパリ市立近代美術館で見ることができます。展示されているのは、その縮小版として制作されたリトグラフです。

やわらかな色彩のハーモニーでつづられているのは、古代から当時に至る歴史絵巻。上部には、古代の大自然から都市、工場、ネオンなどが作られていく電気技術の発展過程が、また、下部には、アリストテレスからエジソンまで、科学の進歩に貢献した100人以上の学者たちが描かれています。色彩にあふれ、見るだけで美しいのですが、学者ひとりひとりの服装やポーズ、また、モチーフの意味合いを紐解くのも楽しく、飽きることがありません。

デュフィは、「青は、そのすべての段階において、本来の個性を保ち続ける唯一の色彩である」と述べています。「ニースの窓辺」(1928)は、窓から見える海、空、山、そして室内までをも、さまざまな青の色で描き出した、洗練された雰囲気の作品。外と内をつなぐものとして窓を描き、青を効果的に配した他の作品も、瀟洒な香りが感じられます。

また、デュフィは1907~11年に、木版画にも力を注ぎました。アポリネール「動物詩集あるいはオルフェウスとそのお供たち」(1911刊)の挿絵は、モノクロの木版画。詩人オルフェウスと陸、海、空の動物と昆虫たちをテーマに、馬、ライオン、クジャク、ミミズク、鯉などが描かれています。動物たちの周りには、黒地に白の太い線で、植物などの背景が画面いっぱいに描かれ、力強く装飾的な味わい。モノクロなのに、どこか華やかな印象があります。

絵画はもちろん、木版画や他の装飾芸術に至るまで幅広く展開された、デュフィの詩情ある世界を存分に感じることができますよ。

展覧会のホームページはこちらから
Bunkamuraザ・ミュージアム

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マルク・シャガール 版画の奇跡∞無限大の色彩

シャガール(1887~1985)は生涯にわたり、積極的に版画に取り組んだ画家として知られています。ピカソの版画展が町田市立国際版画美術館で開催されていますが、20世紀におけるもう一人の巨匠、シャガールの版画も目黒区美術館で見ることができます。
<会期:2014年4月12日~6月8日>

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1914年、初代ジュール・ムルローがパリのモンパルナスに創設したムルロー工房は、ピカソ・マティス・ミロ・ユトリロなど名だたる芸術家が、その技術を信頼していた版画工房。シャガールも1000種類を超える版画をムルロー工房で制作したといいます。今回展示されているのは、「ダフニスとクロエ」(全42点、1957~60、1961刊)。エーゲ海に浮かぶ島で繰り広げられる、少年ダフニスと少女クロエの恋の物語がテーマです。

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リトグラフは、使用する色の数だけ版を個別につくりますが、「ダフニスとクロエ」には20色以上もの色が用いられ、輝くような色彩で物語の場面が描かれています。背景には、果樹園や泉など、ギリシアの緑豊かな自然やあふれる光が存分に描かれ、みずみずしい美しさに満ちています。ダフニスとクロエは、ある老人に「恋に効く薬は抱き合って一緒に寝ることだ」と教えられますが、そのモチーフも随所に見られます。

初期の傑作とされる銅版画「死せる魂」(全96点、1923~27、1948刊)は、独特の線描のモノクロ版画。帝政ロシアにおいては、実際は死んでいるのに戸籍上は生きている農奴(死せる魂)が存在していました。この戸籍の売買で一儲けをたくらむペテン師を主人公とした、ゴーゴリの小説がテーマの作品です。

一癖ある登場人物が表情豊かに描かれており、口髭や髪型、外套やドレスなどのデティールから、それぞれの個性や時代性が伝わってきます。場面に応じて、町や郊外の風景、室内の家具や置物等も細かく描きこまれ、演劇の舞台を見ているかのようです。風刺画のような味わいも楽しく、いきいきと感じられます。

色彩の魔術師としてのシャガールと、演劇的なモノクロームの世界を創造したシャガール。どちらの作品も、テーマとなった物語のあらすじとともに展示されているので、ストーリーを読み解きながら鑑賞できるのが魅力です。

会期は、あとわずかです。

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展覧会のホームページはこちらから
目黒区美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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