ガウディ×井上雄彦 シンクロする創造の源泉

19世紀から20世紀にかけて、バルセロナを中心に活躍したアントニ・ガウディ(1852~1926)。建築家として、今も建設が進められているサグラダ・ファミリアをはじめ、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、グエル公園など世界遺産にも登録されている作品を残しました。ガウディ自筆のスケッチや図面、建築模型などといっしょに、漫画家井上雄彦(1967~)がガウディの人間像を描いた作品を展示する展覧会が、森アーツセンターギャラリーで開催されています。
<会期:2014年7月12日(土)~9月7日(日)>

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ガウディの子どもの頃の愛称は、トネット。手先が器用でしたが、リウマチを持ち病弱だったため、ひとりで動植物をじっと観察している少年だったとか。ガウディを描くにあたって井上雄彦は、バルセロナのサグラダ・ファミリアが見える部屋で1ヶ月間暮らし、カサ・ミラの1室にアトリエを構えたといいます。そんな井上雄彦の「トネット」(2013)は、感受性豊かなガウディ少年が、本当にそこに佇んでいるかのよう。

ガウディの建築は、独特の動きのある曲線が特徴的ですが、動植物など自然界のモチーフのかたちや色を作品に採用しているとのこと。自然を観察し、自然がつくる有機的な曲線を、建物の構造や細部に反映する―。ガウディの少年期の観察眼が、生涯にわたって、生かされたのかもしれません。

バルセロナで建築家として歩み始めたガウディは、新興のブルジョワであったアウゼビ・グエル(1846~1918)の庇護を得、グエルの邸宅やグエル公園などを設計します。グエル公園(1900~14)は、グエルが庭園に囲まれた住宅地をコンセプトに計画したプロジェクトで、ガウディも1区画を購入しました。

カサ・バトリョ(1904~06)の内観は海底洞窟、採光用中庭は深海をイメージ。カサ・ミラ(1906~10)の外観は、海の波をイメージしたといいます。森の木々や葉だけでなく、海の生き物、巻貝、洞窟、波、渦潮などが発想の源泉となったのも、バルセロナならではですね。

そんなガウディが、サグラダ・ファミリアに携わるのは、31才のとき。以来、40年の生涯をこの仕事に費やしました。1925年、73才のガウディは、聖堂内の敷地に居を構え、ミサと聖堂の建設のみに没頭します。ところが、翌年、ミサに向かう途中、路面電車にはねられ命を落としてしまうのですから、どんなに無念だったことでしょう。粗末なみなりのガウディを誰も天才的な建築家とは気づかず、手当が遅れたとも。

図面や建築模型などの貴重な資料に、井上が描くガウディ像が、奥行きを与えています。サグラダ・ファミリアの完成予定は、2026年。没後100年のガウディは、どんな顔でそれを見守るのでしょうか。

展覧会のホームページはこちらから
森アーツセンターギャラリー

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

オルセー美術館展 印象派の誕生

1874年、パリで第1回印象派展が開かれる以前より、“新しい絵画”の潮流は始まっていました。オルセー美術館から名画84点が来日し、“印象派の誕生”をテーマに、絵画の変革をたどる展覧会が国立新美術館で開催されています。
<会期:2014年7月9日(水)~10月20日(月)>

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19世紀後半、神話や歴史、聖書などを題材に理想の美を描くのではなく、現実の世界を自由に描こうという機運が高まっていました。クールベ(1819~1877)が「裸婦と犬」(1861~62)で描いた裸婦は、少したるんだシルエットの生身の女性。ミレー(1814~1875)の「晩鐘」(1857~59)も、神や聖書の中の人物ではなく、農民の心の祈りを描いています。

そして、パリの“今”を描き、印象派の先駆的画家として知られるマネ(1832~1883)。マネの絵は、今回最多の11点が出品されており、展覧会も、1章が「マネ、新しい絵画」、最終章が「円熟期のマネ」と題され、マネに始まりマネに終わる構成となっています。

1章にある「笛を吹く少年」(1866)は、肖像といえば王侯貴族が描かれた時代に、無名の鼓笛隊の少年を描いた作品。サロンで落選し、「貸衣装屋の看板のようだ」と酷評されたとか。少年と空間のみのシンプルな構成。今では、浮世絵の影響と指摘されていますが、その平面的な描き方は、当時の批評家には斬新すぎたのでしょうか。実際に絵の前に立つと、赤、黒、白、黄と大胆な色彩で簡潔に描かれた少年の姿が、光輝くような鮮やかな印象で心をとらえます。

最終章にある「婦人と団扇」(1873~74)は、ジャポニスムが色濃く反映された作品。金の腕輪と髪飾り、黒のドレスの女性の背景には、日本モチーフの鶴の絵が描かれ、団扇が散らされています。

マネを慕ったモネ(1840~1926)の作品も見逃せません。26才のモネが、マネの「草上の昼食」(1863)に触発され、「失敗したら死ぬだろう」という意気込みで描いた「草上の昼食」(1865~66)は、4mに及ぶ大作。ピクニックといった日常の風景を、歴史画のような大作として描いたのも印象派ならでは。当時のブルジョアジーの美しい装いも楽しめます。

「ラ・ジャポネーズ」(1876)で、妖艶に微笑んでいたモネの妻カミーユ。その亡骸を描いた「死の床のカミーユ」(1879)のように、悲しい作品も。死者の顔色の微妙な変化が、ブルーグレーのグラデーションで描かれています。

新しい表現を求め、同時代の風物を描いた印象派の画家たち。都市化していくパリや、鉄道によって足をのばせるようになった郊外の風景、ブルジョアジーの生活シーンなどが題材となりました。主観的な感覚で表現された“新しい絵画”の成り立ちに迫る展示です。

展覧会のホームページはこちらから
国立新美術館

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ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展

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魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展

1909年、パリ。ロシアの貴族セルゲイ・ディアギレフ(1872~1929)率いるロシアバレエ団“バレエ・リュス”が、センセーショナルなデビューを遂げました。ストラヴィンスキー、ドビュッシーらが音楽を手がけ、マティス、デ・キリコ、シャネルらが衣装をデザイン、そして、ダンサーには、伝説的踊り手ニジンスキー。舞台美術、衣装、音楽、踊り、すべてに当時の才能が結集した総合芸術として、時代を席巻しました。

バレエ・リュスのコスチュームを蒐集し、約40年かけて修復してきたオーストラリア国立美術館の貴重なコレクションが、国立新美術館で公開されています。
<会期:2014年6月18日(水)~9月1日(月)>

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バレエ・リュスのコスチュームは、赤、グリーン、黄色、ピンク、ブルーなど、色鮮やか。遠くから舞台を見たときに、鮮烈な色彩の衣装をまとった踊り手が交錯し、まるで動く絵のようだったといいます。物語はロシア、アラビア、インドなどを舞台としたため、デザインもエキゾティック。パリの観衆を魅了したに違いありません。

ロシア出身の画家レオン・バクスト(1866~1924)デザインの衣装は、ロシアバレエときいて思い描くイメージそのもののように感じました。「カルナヴァル」(1910)は、フリルを重ねたスカートやレースの袖がロマンティック。「クレオパトラ」(1909)、「シェエラザード」(1910)はエキゾチシズムに溢れたスタイルが魅力です。「ダフニスとクロエ」(1912)の海賊は、幾何学的な模様と大胆な色使いが目を惹きます。

マティス(1869~1954)がデザインした「ナイチンゲールの歌」(1920)の衣装や、デ・キリコ(1888~1978)の「舞踏会」(1929)の衣装は、太い線で表現された柄が、まるで彼らが絵筆で描く絵画のモチーフのよう。おもちゃ屋が舞台の「奇妙な店」(1919)は、ドラン(1880~1954)のデザインで、モヘアを毛にあしらったプードルのコスチュームが展示されています。

生地を重ねて柄を表現し、飾りを縫い付ける―。ひとつひとつに手が込んでおり、宝石のように美しいコスチュームが並んでいます。バレエの衣装は、デザイン、カッティング、模様、色使いが創造性に満ちているのはもちろん、ダンサーの力強い動きを可能にし、パフォーマンスを十二分に伝えるものでなければなりません。舞台では、いったいどんな動きを見せたのでしょうか。

ディアギレフが亡くなると、バレエ・リュスは解散し、メンバーは世界中にちらばって活動を続けたといいます。それが世界各国の現在のバレエの源流となっているとか。100年の時を超えて想像の翼を広げてみませんか。

展覧会のホームページはこちらから
国立新美術館

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横尾忠則肖像図鑑

多彩な作風で知られる横尾忠則(1936~)。1960年代から現在までに描かれた、俳優、作家、ミュージシャンなどのポートレイト作品を集めた展覧会が、川崎市市民ミュージアムで開催されています。入院のため、オープニングを欠席されたとのことですが、快復を祈らずにはいられません。
<会期:2014年6月28日(土)~9月23日(火)>

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圧巻なのは、200点に及ぶ日本近代文学者の肖像(2006~2013)が並んでいるコーナー。2007年より日本経済新聞で連載された、瀬戸内寂聴「奇縁まんだら」の挿絵制作をきっかけに描き始めた作品とのこと。「奇縁まんだら」は、寂聴が交友のあった作家、芸術家や政治家などの物故者との思い出を連載したもので、毎回添えられた横尾の肖像画が人気を博しました。

寂聴が語らなかった作家を追加して制作が進められたシリーズは、タッチも色使いもさまざま。赤いフンドシで煙草をふかす稲垣足穂、檸檬色の顔の梶井基次郎、写真で見慣れたほほ杖をつく夏目漱石、トレードマークの帽子をかぶった中原中也、憂鬱そうな太宰治、背景が赤に塗られた宇野千代・・。人となりを重ねて鑑賞すると、なるほどと思わせる作品ばかりで、見飽きません。

檀一雄「葦の髄から」は、人間模様を綴ったエッセイで、横尾の挿絵(1974)が添えられていました。原画はインクの線1本で、目鼻立ちから雰囲気まで、その人物でなければありえない存在感が描かれており、見事です。肖像には、岸田麗子や、NHK連続テレビ小説「花子とアン」で話題の柳原白蓮も。

メインビジュアルのビートルズをはじめ、山口百恵、桃井かおりなど、時代を彩ったスターたちにも出会える、横尾ワールドです。

展覧会のホームページはこちらから
川崎市市民ミュージアム

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心が豊かになるアートを見つけに飛び立つ青い鳥です。

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