美少女の美術史

子どもでもなく大人でもない、成熟へのモラトリアムともいえる少女期。過ぎ去ってしまう一時期の美しさは、江戸時代の浮世絵から、大正・昭和の少女雑誌、そして現代アートに至るまで、さまざまに表現されています。青森県立美術館、静岡県立美術館、島根県立石見美術館の共同企画として、“美少女”をテーマとした展覧会が開催されています。
青森県立美術館 会期終了
静岡県立美術館 2014年9月20日(土)~11月16日(日)
島根県立石見美術館 2014年12月13日(土)~2015年2月16日(月)

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大正・昭和の少女雑誌は、各時代の少女の心に夢とときめきを与えてきました。大正ロマンの雰囲気漂う高畠華宵(1888~1966)が描く少女は、手足がすらりと長く、ファッショナブル。華麗な絵柄に魅了されます。戦後、編集者としても活躍した中原淳一(1913~1983)の少女は、憂いを含んだ大きな瞳で、可憐な印象。中原の継承者とされる内藤ルネ(1932~2007)は、頭や顔のバランスをキュートに見えるようデフォルメし、快活な少女像を演出。さらにファンシーで軽やかなタッチにキュンとなる、水森亜土(1939~)の少女たち。歌いながら両手でさらさらとイラストを描く水森の姿を、テレビで見た記憶を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そして、1970年代後半から1980年代前半にかけての少女漫画誌「りぼん」の付録。本誌でも「乙女ちっく」漫画がブームとなり、陸奥A子、田淵由美子、太刀掛秀子といった漫画家の名前を列挙するだけで、甘酸っぱい思いが押し寄せます。

絵画では、霜鳥之彦(1884~1982)の「少女(休憩)」(1926)。ヴァイオリンの練習の途中で、ベッドに寝ころび譜面を見る少女。白のシンプルなワンピースで片膝をたて、無防備なその姿は、バルテュス(1908~2001)の「夢見るテレーズ」(1938)さながら。

1920年代には都市部で生活の近代化が進み、夏は水泳、冬はスキーといったレジャーが発達したとのことですが、描かれたモダンガールは戦前とは思えません。榎本千花俊(1898~1973)「口紅を描く」(1935)は、ブルーのスキーウエアの少女がコンパクトをのぞき、口紅を塗り直しています。菊池華秋(1888~1946)「雪晴」(1938)の少女は、真っ赤な帽子とパンツ姿で、颯爽とゲレンデを滑走。なんとも勇ましい美少女たちです。

現代アートでは、根付の世界に美少女モチーフを導入した永島信也(1986~)。鳳凰の羽や布に包まれ、それと一体化した少女たちは、掌の女神のよう。ob(1992~)の大きな黒目がちの瞳と小さな口の少女は、どこかはかなげで、何かを訴えるような表情。一度見たら忘れられません。

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何者かになる前の、過渡期の美しさに満ちた少女の存在を、さまざまな時代のさまざまなジャンルの作品からみつめる展示です。

展覧会のホームページはこちらから
静岡県立美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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