花と鳥の万華鏡

季節を彩る色とりどりの花、そして、そこに集う鳥。花と鳥は、自然の美しさや季節の象徴として日本人に愛され、日本画のモチーフとしても代表的なものです。花と鳥を描いた作品を選りすぐった展覧会が、山種美術館で開催されています。
<会期:2015年2月11日(水)~4月12日(日)>

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会場に入ると、速水御舟(1894~1935)「牡丹花」(1934)が迎えてくれます。鮮やかな色彩ではなく、墨のみで描かれた牡丹の花。墨の濃淡とにじみで、花びらの質感が表現されています。亡くなる前年の作品で、御舟が最後にたどり着いた境地として高く評価されています。

御舟の作品は、金地屏風「翠苔緑芝」(1928)も展示されています。右隻には、枇杷の木の根元に黒い猫。左隻には、芝生に遊ぶ白い兎。シュールな雰囲気が漂います。

もうひとつの金地屏風が、鈴木其一(1796~1858)「四季花鳥図」(19世紀)。右隻は春夏の世界で、菜の花、たんぽぽ、ひまわり、朝顔などが咲き誇り、左隻には秋冬の、菊、すすき、水仙などが。どちらにもつがいの鳥が描かれ、夫婦円満を暗示しているのだとか。

菱田春草(1874~1911)「月四題のうち“春”」(1909~10)と横山大観(1868~1958)「春朝」(1939)は、どちらも山桜を描いていますが、対象的な趣。春草は、亡くなる前年に山桜と月を描き、桜は薄紫のシルエットではかなげな印象。大観は、山桜と太陽を描き、71歳ごろの作品ながら、生命感に満ちています。

上村松篁(1902~2001)の鳥は、美人画のように美しく、「白孔雀」(1973)は、横長の画面いっぱいに、長い尾をした1羽の白孔雀が描かれています。背景には、黄色のハイビスカス。白く長い尾は、レースのように優雅です。「竹雪」(1977)は、雪の積もった竹の葉に隠れるように、1羽の鳥が描かれ、まるで深窓の令嬢さながら。

福田平八郎(1892~1974)「春」(1925)はモダンな印象。上部には、枝に咲く赤い花。下部には、水面からのぞく岩に羽を休める3羽の鳥。間をつなぐ、線だけで描かれた水面の表現が秀逸で、水面に浮かぶ赤い花びらが美しい作品です。

日本の美しい四季をあらためて感じ、春の訪れが待ち遠しくなる展覧会です。

展覧会のホームページはこちらから
山種美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展

1937年に開館したワシントン・ナショナル・ギャラリーはアメリカの首都にあり、所蔵品のほとんどが一般市民の国への寄贈からなる国立美術館。12世紀から現代まで、約12万点の西洋美術のコレクションを誇ります。ルノワール、マネ、モネ、セザンヌ、ゴッホなど、人気の高いフランス印象派とポスト印象派の絵画68点が、三菱一号館美術館で展示されています。
<会期:2015年2月7日(土)~5月24日(日)>

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展示作品の多くは、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの創設者アンドリュー・W・メロンの娘、エイルサ・メロン(1901~1969)のコレクションによるもの。自宅を飾るために集めただけあって、全体としてあたたかでやさしい雰囲気に満ちています。

シスレー(1839~1899)の穏やかな風景画に始まり、ウジェーヌ・ブーダン(1824~1898)の浜辺の光景へ。ウジェーヌ・ブーダンは、印象派に先駆けて自然の光の中で制作し、モネに戸外制作の重要性を教えた人物。トゥルーヴィルの浜辺に集う女性たちのドレスも美しく表現されています。ゴッホ(1853~1890)「オランダの花壇」(1883)は、長方形に規則正しく植えられた、色とりどりの花壇が並んだ風景が描かれ、ゴッホとは思えないほど、やさしい印象。

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展覧会のメインビジュアルに使用されている、ルノワール(1841~1919)の女性像にも心が安らぎます。微笑みをたたえて猫を抱く女性、そして、イブニングドレスをまとい、淡い青と緑の背景に溶け込む女性。ルノワールには、モネ(1840~1926)の妻カミーユと息子のジャンを描いた作品や、パイプをくゆらすモネ自身を描いた作品もあり、親密な雰囲気が漂います。

小品にも味わい深い作品がそろっており、ブルターニュの村を描いたルドン(1840~1916)の風景画は、静かな趣き。ナビ派のアンティミスト(親密派)として知られるヴュイヤール(1868~1940)は、身づくろいをする女性やコーヒーを飲む女性など、私的な世界観の室内画が新鮮です。

親しみやすい作品が多く、肩の力を抜いて鑑賞できます。5月まで開催されていますので、うららかな日差しに誘われて、西洋美術の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

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新印象派 光と色のドラマ

展覧会のホームページはこちらから
三菱一号館美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

新印象派 光と色のドラマ

はじめて印象派展が開かれたのは、1874年。モネ(1840~1926)に代表される印象派の画家たちは、絵具を短い筆触で画面に置くことで、見たままの光や明るい色彩を表現しました。波立つ海や移ろう光などを、感覚的に描いたのです。それに対し、1886年、第8回印象派展に出品したスーラ(1859~91)やシニャック(1863~1935)は、新印象派と呼ばれます。印象派から新印象派、そしてフォーヴィスムへ。その表現の変化を、時代に沿って分かりやすくたどることのできる展覧会が、東京都美術館で開催されています。
<会期:2015年1月24日(土)~3月29日(日)>

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新印象派の画家たちは、印象派の表現を発展させ、最新の光学や色彩理論に基づき、色彩の効果をより科学的に追求しました。端緒となったのは、第8回印象派展で注目された、スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(1884~86)。より明るい色彩を求めて生み出された、点描の技法で描かれています。絵具は混ざるとにごるため、パレットで色を混ぜることをやめ、純色を点でキャンバスに配置し、見る人の目の中で混ざりあって見えるようにしたのです。スーラやシニャックのパレットが展示されていますが、確かに純色が規則正しく置かれ、一目瞭然。

高さ2m、幅3mを超えるこの大作は展示されていませんが、習作4点を見ることができます。習作からさらにモチーフを選び、画面を再構成したとのことで、この点も、見たままを描く印象派とは異なっていますね。

新印象派というと自然の風景のイメージがありますが、マクシミリアン・リュス(1858~1941)のモチーフはユニークです。庶民や労働者の世界に関心を持ち、雲と混ざり合う煙突の煙や、高炉の炎などが描かれています。

1891年、スーラが31歳で亡くなって以降、点描技法も変化していきます。色彩理論に忠実であるよりも、強い色彩や大きめの筆触を用いた、より自由な表現が生まれました。シニャックの筆触も大きく大胆になっていきますし、アンリ=エドモン・クロス(1856~1910)の色彩豊かで幻想的な作品も目をひきます。マティス(1869~1954)が点描を試みた作品も。

展覧会のラスト作品は、アンドレ・ドラン(1880~1954)「コリウール港の小舟」(1905)。原色を用い、ダイナミックな筆触で力強く描かれた風景がそこにあります。スーラの小さな点から紡がれた20年のドラマ。すべては、筆触を残すことから始まったと言えるのかもしれません。

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東京都美術館

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キャプテン・クック探検航海と「バンクス花譜集」展

16世紀初め、イギリスで見られた草木類はわずか200種類であったとか。植物を求めて世界中を探検する「プラントハンター」が活躍し、新種の植物を採集していました。現在のように季節や地域を問わず、さまざまな珍しい植物を手に入れることのできる時代とは異なり、当時の未知なる植物へのあこがれと興味は非常に強かったのです。

1768年8月26日、ジェームズ・クック(1728~79)を艦長とするエンデヴァー号が、第1回太平洋探検航海に旅立ちました。乗組員の中には、動植物の調査を目的とする科学班が含まれており、独学で植物学を学んだジョゼフ・バンクス(1743~1820)も乗船しました。この航海で収集した植物標本と画家が描いたドローイングをもとに、豪華植物図譜「バンクス花譜集」を企画した人物です。

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イギリスから、タヒチ島を中心としたソサエティ・アイランズ、ニュージーランド、オーストラリア、ジャワをめぐった、3年に及ぶ航海。行く先々で目にする未知の植物は、どんなにか美しく、刺激的であったことでしょう。カメラなどない時代、植物を船に持ち帰り、専門の画家がひとつひとつスケッチし記録したのです。

3分の1以上の船員が命を落とした過酷な航海でしたが、バンクスたちは、おびただしい数の動植物の標本とそのドローイング、滞在地の民族資料などを持ち帰りました。帰国後すぐに、ドローイングをもとにした多色刷りの植物図譜の発行を企画しますが、完成したのは航海から200年後。1980年代になってようやく100部限定で「バンクス花譜集」が出版されます。全743点から厳選された120点が、Bunkamuraザ・ミュージアムで展示されています。
<会期:2014年12月23日(火)~2015年3月1日(日)>

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1点1点が、葉、花のかたちや質感、葉脈、がく、茎など細部まで細密に描写されています。図鑑としての役割を果たしながら、美しい色彩で、アートとしての趣も十分です。そして、会場には植物画だけでなく、天球儀やエンデヴァー号の模型、太平洋地域の装身具や道具などの民族資料なども展示され、まるで、太平洋航海を追体験しているかのよう。未知の植物を目にしたバンクスの興奮を想像しながら、鑑賞してみてはいかがでしょう。

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Bunkamuraザ・ミュージアム

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心が豊かになるアートを見つけに飛び立つ青い鳥です。

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