画鬼暁斎 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル

幕末明治期の異色の絵師、河鍋暁斎(1831~89)。美人画、風景画、幽霊画、戯画から春画まで、異なるテイストで描かれた作品は、ひとりの絵師が描いたとは思えないほど。6歳で浮世絵師歌川国芳に入門し、9歳で狩野派に転じたといいます。浮世絵と狩野派の技量と精神を合わせ持っていたのです。

暁斎は、上野博物館、鹿鳴館、ニコライ堂、そして三菱一号館を設計したコンドル(1852~1920)が、師事した人物でもあります。優れた技量が感じられるバラエティ豊かな暁斎の作品を、弟子との由縁深い三菱一号館美術館で見ることができます。
<会期:2015年6月27日(土)~9月6日(日)>

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楽器を奏でたり碁盤を囲んだり、遊び騒ぐ骸骨たちの夢を見る地獄太夫(1874)や、「放屁合戦図」(1870)などユニークな絵も多い暁斎ですが、正統派の絹本墨画「鯉魚遊泳図」(1885~86)も見逃せません。水底にひそむ鯉、水中で身をひるがえす鯉など、異なる姿の9尾の鯉が描かれ、どれも生きているかのようです。

メトロポリタン美術館が所蔵する100図の画帖(1888頃)の一部が里帰りしていますが、そこに描かれている動物たちのいきいきとした様も見事です。球のように丸まって眠る2匹の猿の、ふさふさした毛並みと幸せそうな表情。蛙を捕らえる猫や、とかげを食べるうさぎの力強さ。そして、存在感のあるミミズクや鷲。

素敵な美人画は「美人観蛙戯図」(明治前半)。うちわを手に、庭の灯篭の側にしゃがみこむ美女が眺めているのは、蛙の相撲。たくさんの蛙の中には、美女と同じように膝をかかえる蛙もおり、相撲ではなく美女をみつめているような…。

伊藤若冲、曾我蕭白も高い人気がありますが、暁斎によって、日本美術がまた再評価されそうです。

展覧会のホームページはこちらから
三菱一号館美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

ミュシャとラリック

江戸時代に活躍した伊藤若冲と与謝蕪村は、1716年生まれの同い年。そして、19世紀末のパリで活躍したミュシャ(1860~1939)とラリック(1860~1945)は、1860年生まれの同い年です。アール・ヌーヴォーの作家として知られる二人の生涯を紐解く展覧会が、箱根ラリック美術館で開催されています。
<会期:2015年4月25日(土)~12月13日(日)>

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二人の名声が高まるのは、フランスが誇る大女優サラ・ベルナール(1844~1923)に見出されたことがきっかけでした。ミュシャは、サラの演目「ジスモンダ」のポスター(1894)を制作。デザインを気に入ったサラは、ミュシャと6年間の専属契約を結んだといいます。ラリックは、サラの舞台用コサージュを制作。ミュシャがデザインし、ラリックが制作したといわれる、舞台「遠国の姫君」用冠「ユリ」(1895)が展示されていますが、豪華で迫力のある美しさを放ちます。

ミュシャは花形デザイナーとして、ビスケットの箱、ビールのポスター、香水のラベルまで、さまざまな商業用の仕事をこなすようになります。渡米して、アメリカの雑誌「ハースツ・インターナショナル」の表紙画も。一方、ラリックは、ジュエリーからガラス工芸に転身し、香水メーカー「コティ」の香水瓶を手がけます。瓶全体が白蓮をかたどっていたり、栓にスズメバチや小花があしらわれていたり、思わず手にとりたくなるデザインが見事です。

1900年のパリ万博に、ラリックは100点を超える宝飾品を出品。ショーケースのディスプレイに、女性と蝶が合体したブロンズ像を並べて展示し、話題をさらいました。ラリックのブースに群がる人々を描いたヴァロットン(1865~1925)の木版画(1901)も興味深く見ることができます。

ラリックは、シャンデリアや壁面など室内装飾も手がけるようになり、1933年に建てられた朝香宮邸にも据えられています。箱根ラリック美術館だけでなく、東京都庭園美術館でも出会うことができますよ。

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東京都庭園美術館リニューアルオープン

展覧会のホームページはこちらから
箱根ラリック美術館

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滝平二郎 きりえの夏

「モチモチの木」の豆太に誘われ、ギャラリーに足を踏み入れると、滝平二郎のきりえ世界が広がっていました。1970年より朝日新聞に連載されたきりえの中から、「夏」をテーマとしたきりえ原画が、ノエビア銀座ギャラリーで展示されています。
<会期:2015年6月29日(月)~8月21日(金)>

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滝平二郎という名前に聞き覚えがなくても、絵本「モチモチの木」は知っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。滝平二郎の代表的な絵本作品です。また、新聞の日曜版にカラーで連載されたシリーズを、見た記憶があるという方もいらっしゃるかもしれません。黒のラインを生かした滝平のきりえを見ると、やさしさの中に力強さを感じさせる独自の世界に引きこまれます。

描かれているのは、夏という季節の風物や人々の暮らしです。七夕の竹を切った父親と、短冊を縁側で書く子どもたち。みんなで川に入り、魚を捕って遊ぶ子どもたち。つるを伸ばすゆうがおと、柄杓で水を飲む子どもたち。背の高さほどもある、夏草茂る原っぱを行く子どもたち…。自然や季節に寄り添って生きる―忘れかけていたそんな豊かさをよみがえらせてくれるようです。

登場する少年、少女に自分を重ね、心がきりえ世界を遊びます。郷愁を誘われ、やさしい気持ちになれるのはもちろんですが、グラフィカルな構図や色彩の美しさにも目を奪われます。今見ても古びていない、作品の力ですね。きりえ作品以外にも、絵本「はだかの王さま」の滝平原画をモチーフにしたアロハシャツや、「モチモチの木」の豆太のオブジェも会場で迎えてくれます。

きりえの夏を感じに、出かけてみてはいかがでしょうか。

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ノエビア銀座ギャラリー

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ムルロ工房と20世紀の巨匠たち

石版石の上に直接ペンや筆で描くことのできるリトグラフは、意図や感情をそのまま表すことができるとして画家たちに好まれました。20世紀の偉大な芸術家たち―ピカソ、マティス、シャガール、ミロ、ブラック、フェルナン・レジェなどを迎え入れ、リトグラフを芸術の表現手段にまで高めた名高い工房が、パリの「ムルロ工房」です。ムルロ工房が手がけた版画、ポスターなど約300点を集めた展覧会が、神奈川県立近代美術館葉山で開催されています。
<会期:2015年5月24日(日)~7月20日(月)>

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1921年のパリ。フェルナン・ムルロ(1895~1988)は、父の死に伴い、リトグラフ印刷所を受け継ぎます。以降、ムルロ工房で制作した作品の出来栄えに満足した芸術家の輪が広がり、1930年代を通じて、フランス国内最高のリトグラフ工房として認められるようになったそう。

リトグラフは、画家と職人との共同作業。画家を理解し、インクや版を調整する技術の高い職人の存在が不可欠でした。マティスはガストン・テュタン、シャガールはシャルル・ソルリエというように、決まった職人が画家を担当するようになったといいます。ムルロ工房は、ヘンリ・ムーア、ポール・デルヴォ-など国外の芸術家からも依頼を受け、1960年にはニューヨークに支社を設立するほどになりました。

会場には、シャガールの「ダフニスとクロエ」(1961年刊)などのリトグラフ作品に加え、世界でもっとも美しい雑誌と謳われた芸術文芸雑誌「ヴェルヴ」(1937年創刊)も。同誌に掲載するすべてのリトグラフを依頼されましたが、フェルナン・ムルロは、7000部の質を管理することへの懸念から、最初は難色を示したといいます。国立美術館や画廊で開かれた展覧会ポスターも、芸術性の高い仕上がりです。

梅雨空の続く毎日ですが、葉山でパリの風を感じてみてはいかがでしょうか。

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巨匠たちのアートポスター パリ・ムルロー工房から

展覧会のホームページはこちらから
神奈川県立近代美術館葉山

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