朝井閑右衛門展 空想の饗宴

モダン東京と呼ぶにふさわしい、関東大震災から復興を果たした1930年代の東京。そんな時代の空気を感じさせる1枚が、朝井閑右衛門(1901~1983)の「丘の上」(1936)です。神奈川県立近代美術館所蔵の傑作を、練馬区立美術館で見ることができます。
<会期:2016年9月18日(日)~11月13日(日)>

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500号の大画面には、一角獣の獣面をかぶった道化師を中央に、楽器を奏でる3人の男性とダンスを踊る3人の女性、7人の饗宴が描かれています。花模様のドレスを着て踊っている女性は、ボッティチェリ「春」(1482頃)に描かれた花の女神を彷彿とさせます。丘の上の神殿を思わせる白い柱には花が咲き乱れ、ざくろ、ぶどう、バナナなど果実の恵みも山盛りに。自身では「のどかな春の午後の雰囲気を描いた」と述べていますが、赤紫を基調としたモデレートな色彩の中に、どこか憂鬱なムードを漂わせているところが、たまらなく魅力的です。朝井は、本作品で文部大臣賞を受賞しています。

同時期に描かれた、関東大震災後の近代都市東京の街並みを題材とした「東京十二景の内」連作も、どこかヨーロッパの雰囲気が感じられ、心惹かれます。

「丘の上」は、新橋第一ホテルに飾られましたが、ホテルはGHQに接収され、接収後、かなり破損した状態で見つかったといいます。朝井が作品を取り戻し預けたのは、今も上野に店を構える「浅尾拂雲堂」。朝井はここのオーダーメイドの額縁が、大のお気に入りであったとか。

1950年、朝井は「閑右衛門自像昇天之図」として自分が死んだところを描いていますが、戦後は、絵具を厚く重ねたゴツゴツした筆致が目立つようになり、1930年代のムードはもう感じられません。1960年頃に描かれた、三好達治、草野心平、室生犀星、萩原朔太郎らの肖像画は味わい深く、彼らへの愛情を感じますが。

晩年の朝井は、鎌倉市由比ガ浜にアトリエを構え、人形や壷、木馬、メリーゴーランドなど気に入ったものをところ狭しと並べて創作していたといいます。絶筆となった「薔薇」(1983)は、壷に活けられた薔薇が画面一面に描かれ、重ねられた絵具は高いところでは2cmほども。「画面の上で新種の薔薇を咲かせている」つもりで描いていたそうですが、身の回りに置いた品々も画面の中の新種の薔薇も、最後まで愛したものだったのでしょう。

展覧会のホームページはこちらから
練馬区立美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

鈴木其一 江戸琳派の旗手

琳派といえば、京都の絵師、尾形光琳(1658~1716)の「燕子花図屏風」を思い浮かべます。金地の大画面に、緑青と群青で表現された燕子花のみが大胆に配置され、強く印象に残ります。琳派のグラフィカルな構図と金箔を使った装飾的なスタイルは、クリムトなど海外の芸術家にも影響を与えたとか。

光琳から100年後、江戸の町の酒井抱一(1761~1828)が光琳に傾倒し、江戸琳派として琳派を再興。さらに抱一の弟子の鈴木其一(1796~1858)が発展させ…と、琳派の系譜は受け継がれていきます。今回、サントリー美術館で開催されているのは、江戸琳派の旗手と題し、鈴木其一の代表作品を国内外から集めた展覧会。燕子花図屏風のオマージュにも感じられる、其一の「朝顔図屏風」をじっくりと鑑賞できるチャンスです。
<会期:2016年9月10日(土)~10月30日(日)>

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金地の大画面に青の朝顔だけを描いた「朝顔図屏風」。空間に浮遊しているかのような朝顔の連なりは、大胆かつ現代アートのようにモダンで、一瞬で引きこまれます。

会場には、他にも魅力的な作品がいっぱい。金地に、思い思いに遊ぶ7羽の鶴を描いた「群鶴図屏風」。それぞれの鶴の首の曲線の連なりが、これもグラフィカルで魅了されます。「芒野図屏風」は、銀地にススキが墨で描かれ、これだけなら普通ですが、その上に銀泥でたなびく霞を表現したのが特長的。

双幅の掛軸も美しい対比を見せています。「暁桜・夜桜図」は、右には、紫がかった葉を持つ、明けやらぬ早朝の桜。左にはシルエットで描かれた夜桜が。「雨中菜花楓図」は、右には雨の中の菜の花。よく見ると、葉の下で紋白蝶が雨宿りをしています。左には雨で散る楓が描かれ、菜の花の黄色と楓の赤が目をひきます。

本絵の周囲を取り巻く表装に絵画を描いた「描表装」という手法も取り入れられていました。「歳首の図」は本絵に描かれているのは鶯のみ。紅梅、白梅が表装部分に描かれ、だまし絵のようにも感じられます。

さらに「美」は生活の中にも取り入れられていたようで、紅葉と八重桜を背景に、般若の面を描いた「紅葉狩図凧」や、17cm×7cmのミニ掛軸の三幅対「雛掛物」といった作品も。

自由に発想され、遊び心すら感じさせる作品群に、鈴木其一ワールドが体感できます。

展覧会のホームページはこちらから
サントリー美術館

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ウルトラ植物博覧会2016 西畠清順と愉快な植物たち

キャプテン・クックの大航海の時代から、未知なる植物は人々の憧れ。新種の植物を追い求める「プラントハンター」が、命を懸けて世界中を探検し採集しました。今、日本で最も注目されているプラントハンターといえば、幕末より150年続く花と植木の卸問屋、花宇の五代目、西畠清順(1980~)でしょう。年間50万キロ以上に及ぶ距離を移動し、海外諸国と240トン以上の植物を取引しているといいます。

そんな西畠が集めたウルトラな植物たちをポーラミュージアムアネックスで見ることができます。
<会期:2016年8月4日(木)~9月25日(日)>

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こちらは、インドネシアに分布する「コウモリラン ウイリンキー」。
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4~5億年前に植物が川から陸上に上がってきたとき、巨大化に成功したという木性シダの仲間「ソフトツリーファーン」
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樹齢200年の「バオバブ」。
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日本でも見られる「ガジュマル」。
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ボリビア原産のサボテン「ライオン錦」。
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雲南省原産のバナナの類「地湧金蓮」。かつては、幻のバナナといわれていたとか。
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世界各国で信仰の対象にもなった樹木や、さまざまな造形の植物たち。まだまだ地球上には、見たこともない植物が命を育んでいるに違いありません。神秘的とも言える植物の造形に、自然の不思議と壮大さを感じることのできる展示です。

こちらの記事もぜひ
キャプテン・クック探検航海とバンクス花譜集

展覧会のホームページはこちらから
ポーラミュージアムアネックス

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