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速水御舟の全貌

燃え上がる炎と舞い飛ぶさまざまな色の蛾を描いた、速水御舟(1894~1935)の「炎舞」(1925)。蛾が焼き尽くされるようにも、昇華するようにも見え、情念すら感じるこの作品は、山種美術館の代名詞ともなっています。山種美術館の開館50周年記念特別展として、速水御舟の初期から晩年にいたる作品約80点を見ることができます。
<会期:2016年10月8日(土)~12月4日(日)>

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東京に生まれた御舟ですが、22歳頃から京都近郊の修学院にこもって制作に没頭します。24歳のときに描きあげた「洛北修学院村」(1918)は、自ら「群青中毒にかかった」というほど、一面に青の世界が広がっています。こんもりとした山のふもとにある、京都の山里。画面を覆いつくす木々の葉は、青緑の光と影の細かな筆致で描き込まれています。季節は初夏。夜明け前の薄闇に包まれた、幻想的な空気感。よく見ると静寂の中、すでに起きだして農作業をする女性たちの姿が。御舟は、修学院村をミレーのバルビゾン村にたとえていたといいます。

期待の新人として注目されていた御舟を不幸が襲うのは25歳のとき。東京浅草で市電にひかれ、左足のくるぶしから先を切断してしまうのです。めげずに画業に励んだ御舟は31歳のとき、軽井沢滞在中に「炎舞」を生み出します。当時の御舟は毎晩のように、焚き火とそこに群がる蛾を写生していたとか。仏画の炎のように燃えさかる炎。正面向きに描かれた蛾は、羽の周囲がぼかされてゆらめき、炎に取り込まれるかのようです。

同じ軽井沢で目にした、蔦がからまるブナの巨木を描いた「樹木」(1925)も印象的な1枚です。縦長の画面いっぱいに配された幹。古代の樹木信仰を思わせる、生き物のような立体感。そして、樹皮や苔のみごとな質感。天に連なる、「炎舞」の炎と「樹木」の幹。どちらも不思議な迫力があります。

そして35歳の御舟の大作が「名樹散椿」(1929)。背景には、金箔を細かくした金砂子が全面にまきつぶされています。左に伸びた枝は、たわわな椿の花と葉の重みで大きくしなり、樹齢400年の椿の大木の流れるような枝ぶりが、えもいわれぬ美しさを醸します。

わずか40年という短い人生でしたが、ひとつのスタイルに固執せず、常に新しい日本画の表現を模索し続けたという御舟。その挑戦の軌跡が堪能できます。

展覧会のホームページはこちらから
山種美術館

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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

田沼武能・熊切圭介・齋藤康一写真展「時代の風貌」

教科書で見知っている志賀直哉、川端康成といった小説家や、ブームを巻き起こした小津安二郎、大島渚などの映画監督。さらに、映画「シン・ゴジラ」で首相官邸の壁に掛けられていた絵の作者でもある片岡球子。昭和の時代に文化を創りあげた人物たちの肖像とじっくり向かい合える写真展が、ノエビア銀座ギャラリーで開催されています。
<会期:2016年9月5日(月)~11月4日(金)>

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会場には、24枚の肖像写真が並んでいます。一番古い写真は、60年以上前に撮影されたもの。撮影したのは、日本のフォトジャーナリズムを牽引してきた3人の写真家です。文化人を60年以上撮り続ける田沼武能(1929~)、週刊誌を中心にグラビアページを40年担当した熊切圭介(1934~)、撮影した人物は2000人以上という齋藤康一(1935~)。肖像写真のプロたちが写した、存在感に満ちた風貌からは、表現者としての内面はもちろん、彼らが生きた時代の空気まで伝わってくるようです。

「小説の神様」と言われた志賀直哉(1956年撮影)は、東京・青山の自宅で、鳥かごに顔を寄せています。カナリアにひげをつつかせてご満悦の志賀先生。文豪のイメージとは異なる、微笑ましい姿を見ることができます。

国際的にも評価の高い小津安二郎監督(1960年撮影)は、北鎌倉の自宅の座敷に、自慢の日本画のコレクションを並べて、悦に入っていらっしゃる姿をパチリ。若い頃は絵描きになりたかったそうです。

童謡の「赤とんぼ」などを作曲した山田耕筰(1952年撮影)は、ダブルの背広でピアノにもたれ、ダンディなたたずまい。ベルリンの王立音楽院で学び、フランスの勲章も受章されています。

池田満寿夫、佐藤陽子の両氏(1989年撮影)は、並んでソファにこしかけ、3匹の犬と戯れています。幸福感に満ちた和やかなひとときです。

ひとつひとつのシーンがキャプションで解説されており、その場に立ち会っていたかのような気持ちで鑑賞できます。それぞれの人物の新しい魅力を発見してみてはいかがでしょうか。

展覧会のホームページはこちらから
ノエビア銀座ギャラリー

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

モードとインテリアの20世紀展

2016年は、ポーラ美術館、三菱一号館美術館、世田谷美術館で、ファッションをテーマとした展覧会が開催されましたが、また新しい切り口のファッション展が始まっています。今回、パナソニック汐留ミュージアムに展示されているのは、世界的なデザイナー森英恵を生んだ島根県石見地方にある、島根県立石見美術館が所蔵する国内屈指のモードコレクション。ファッションがめまぐるしく変化した20世紀に焦点をあて、その流れをインテリアとともに紹介しています。
<会期:2016年9月17日(土)~11月23日(水)>

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1900年代初頭、女性たちは、コルセットでウエストを絞った重厚なドレスを着用していました。そんな流れを変えたのは、ポール・ポワレ(1879~1944)のコルセットなしのドレス。ゆったりと布をまとうようなドレスは、女性たちの心も開放したかもしれません。その後、スパンコールや金糸を使った装飾的なドレスや、ドレープ使いがロマンティックなドレスなどが登場し、1960年代には、近未来的なミニドレスへ。

各時代のドレスは、それぞれの時代のインテリアのイラストを背景に展示されていますので、当時を思い描きやすくなっています。

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面白いのは、ドレスだけでなく、スポーツウエアも展示されていること。1910年頃の水着は、透けにくい濃い色の布地のワンピース。1940年代になって、エルメス社から今に近いスタイルの水着が発売されています。20世紀初頭の女性は、コルセットをしてテニスをしていたといいますが、1926年頃には、白いノースリーブのワンピースがテニスウエアに。1940年代のスキースーツは、ウールとナイロン混紡のハイネックのジャンプスーツ。

さらに、各時代のファッション誌などの関連資料も充実。1913年頃のファッションを描いたポショワール(版画)はうっとりする美しさです。ドレープをあしらったロングドレスの女性がソファにもたれたり、ダンスをしたり、ショッピングをしたり。ドレスが着用された場面とともに見ることができます。

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汐留ミュージアムがあるビルの階下は、パナソニックの住まいのショールーム。後世において、現代のインテリアの中には、どんなファションが展示されることになるのでしょうか。

こちらの記事もぜひ
Modern Beauty フランスの絵画と化粧道具、ファッションに見る美の近代

展覧会のホームページはこちらから
パナソニック汐留ミュージアム

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

ダリ展

サルバドール・ダリ(1904~89)の名前は誰もが一度は耳にし、ぎょろりとした目とくるんとカールしたひげを持つ独特の風貌を思い浮かべるのではないでしょうか。そして、作品に描かれた砂浜を思わせる黄色い大地や、ぐにゃりと折れ曲がった時計などの奇妙なモチーフも。国立新美術館に集結しているのは、故郷のスペインからパリ、アメリカへと進出した、少年時代から晩年まで約250点に及ぶ作品群。めくるめくダリの世界にどっぷりと浸れる展覧会です。
<会期:2016年9月14日(水)~12月12日(月)>

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まず展示されているのは、10代のダリが描いた風景画や自画像。点描で描かれた印象派風の浴女や、敬愛したラファエロの自画像のようなポーズをとった自画像など、いわゆるダリ風でない初期作品は新鮮な印象です。1922年、マドリードの王立美術アカデミーに入学しますが、そこでの教育に飽き足らず、反抗的な学生であったとか。ダリが描く自画像もキュビスム風に変化しています。

1929年、詩人のポール・エリュアールの妻であったガラと出会い、恋に落ちたダリ。妻であり、マネージャーでもあったガラは、ダリの作品の中にも多く登場します。「ポルト・リガトの聖母」(1950)は高さ3mに近い大作ですが、聖母マリアのモデルはガラ。スペインのモロッコ進軍という歴史的テーマを描いた「テトゥアンの大会戦」(1962)も、大画面の中央には、ダリとガラが先頭をきって。

1930年代以降、一枚の絵の中に、ひとつの形態を繰り返し描く「形態学的なこだま」を探求するようになったそうです。「奇妙なものたち」(1935)は、星空の下、赤いソファの前に、小枝の髪の毛が生えた木のような女性が立つ不思議な作品ですが、女性の腕と椅子の肘掛、女性の下半身と建物の開口部に同一形態が見られます。曲がった時計、椅子に残された人型のくぼみ、引き出し、ピアノなど、おなじみのモチーフも満載です。

第二次世界大戦が勃発するとアメリカに亡命したダリですが、日本への原爆投下に大きな衝撃を受けたといいます。「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」(1945)は、黒を基調とした陰鬱な世界。悲しげに首を傾ける人物の頭部に、原爆を落とす戦闘機が描かれ、ベースボールに興じるアメリカ人との対比に考えさせられます。

版画作品も展示されており、小説「三角帽子」の挿絵もダリワールドですよ。

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展覧会のホームページはこちらから
国立新美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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心が豊かになるアートを見つけに飛び立つ青い鳥です。

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