ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢

夏目漱石の美術世界展(2013年5月14日~7月7日)で、漱石の愛したイギリス美術の魅力に触れることができましたが、ターナー展(2013年10月8日~12月18日)、そして、森アーツセンターギャラリーで開催されている「ラファエル前派展」と、本物に出会える機会が続いています。
<会期:2014年1月25日~4月6日>

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産業革命を実現し、大英帝国の絶頂期であったヴィクトリア朝(1837~1901)において、1848年、保守的な美術界に反旗を翻す芸術運動が起こります。若き画学生らのグループ「ラファエル前派」によるもので、ミレイ(1829~1896)、ロセッティ(1828~1882)、ハント(1827~1910)の3人が活動の中心となりました。当時の美術界が、ラファエロを規範とする型にはまった形式主義に陥っていると批判し、ラファエロ以前の素朴で誠実な、自然をありのままにみつめる絵画に戻ろうとしたとか。

独創的なアイディアを持つこと、自然を注意深く観察すること、絶対的に優れたものを制作することを掲げた彼らの作品は、特に女性像において、生身の女性の圧倒的な美しさに満ちています。シェイクスピアなどを題材としながら、登場人物は、恋人や妹など実在の女性をモデルとしていたからかもしれません。自分たちの絵のイメージに合う女性を街でみつけては、「唖然とするほどの美女」と呼んでモデルに起用したそうです。

ミレイの「オフィーリア」(1851~52)のモデルは、ロセッティの妻となるシダル。小川でオフィーリアが死にゆく場面を描いていますが、死を前にしても美しい、はかなげなオフィーリアの表情に目を奪われます。細密に描きこまれたドレス。数ヶ月をかけて描いたとされる背景の植物も細密に描写され、精気のあるグリーンが鮮やか。澄んだ流れの中に沈みゆくオフィーリアとの対比が、華麗でロマンティックです。

ロセッティの「見よ、我は主のはしためなり」(1849~50)のマリアは、ロセッティの妹がモデル。翼のない天使とベッドの上のマリアという構成の受胎告知ですが、怯えたようなマリアの表情が斬新です。

ロセッティの作品は、上半身の女性像を集めて展示したコーナーがあり、「プロセルピナ」(1874)が印象的です。ウィリアム・モリスの妻であったジェインがモデルですが、ジェインはロセッティとも親密であったそう。ザクロを食べたため、冥界と地上で交互に暮らすことになったプロセルピナの運命を、三角関係になぞらえています。意志を秘めたまなざしやくちびるの表情に、生身の女性の感情が感じられます。

いずれも、ラファエロの聖母子像のような女性像ではありませんが、みずみずしい魅力にあふれています。ラファエロ前派は、新しい美しさを追求した芸術運動であったといえるのではないでしょうか。

展覧会のホームページはこちらから
森アーツセンターギャラリー


テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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