桑原甲子雄の写真 トーキョー・スケッチ60年

桑原甲子雄(1913~2007)は、戦前から、生まれ育った“東京”を「ごく私的な記念写真」として撮り歩きました。展覧会タイトルに「トーキョー・スケッチ」とあるとおり、何気ない日常が切り取られていますが、時代の記録としてとても興味深い作品群です。1930年代から1990年代まで、桑原甲子雄のモノクロとカラープリント約200点を紹介する回顧展が、世田谷美術館で開催されています。
<会期:2014年4月19日~6月8日>

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特に心惹かれるのは、1930年代の東京の記録。その町並み、人々の服装、おびただしい看板などの光景を見ると、その時代に生きていたわけでもないのに、なぜか懐かしい気持ちが沸き起こります。古きよき時代として受容できる光景そのものだからなのかもしれません。

桑原が生まれた下谷区(現台東区)の商店街は、「新時代の社交場」「強力毛生剤ビルグ」「牛馬車 自動車 通行止」などの看板であふれ、上野駅には「地下鉄新橋まで開通」の文字。家々の戸外には、おしめなどの洗濯ものが連なり、夏の名物であった浅草公園の撒水車の水しぶきがまぶしい。渋谷駅前には、当時すでに人待ち顔の人々が。女性はまだ和装が多く、洋装の女性はあくまでもハイカラ。男性はみな帽子をかぶり、下駄履きでかぶる人も。桑原の町を歩き、写すよろこびが伝わってきます。

時代が下って、1980年代の東京を写した作品も展示されています。渋谷駅前に並んだ公衆電話に群がる人々。電話のまわりには、広告のビラが隙間なく貼られています。本屋の店先には、立ち読みをする子どもたち。どれも、すでに歴史となってしまった光景であることに驚きます。

戦前戦後を通じて、日本の風土とそこに生きる人々を探求した写真家、濱谷浩(1915~1999)とは、なんと隣家の幼なじみであったそう。桑原は濱谷の影響で写真に興味を持ったといいます。「私の東京を写す立場は生活の延長」という桑原の「トーキョー・スケッチ」で、時代を旅してみませんか。

展覧会のホームページはこちらから
世田谷美術館


テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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