バルテュス展

ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家ながら、バルテュスの名前に聞き覚えがない方も多いのではないでしょうか。少女と猫を好んでモチーフとし、独特の具象絵画を追求したバルテュス(1908~2001)は、作品に描かれた少女の挑発的なポーズなどから、批判や誤解にさらされたといいます。バルテュスの初期から晩年までを、40点を超える油彩画を交えて紹介する回顧展が東京都美術館で開催されています。
<会期:2014年4月19日~6月22日>

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バルテュスは、美術史家の父と画家の母のもと、パリに生まれました。母は、詩人のリルケ(1875~1926)と恋愛関係にあり、11歳で描いた最初の作品を見て、バルテュスの才能を見出したのもリルケでした。日本との関わりも深く、リルケとともに岡倉天心(1863~1913)の「茶の本」を読み、日本人形にも魅了されていたとか。バルテュスの最期を看取った伴侶も、1962年、初来日の際に出会った日本人である節子夫人でした。

「少女とは、これから何かになろうとしているが、まだなりきってはいない“この上なく完璧な美の象徴”」と述べたバルテュス。「夢見るテレーズ」(1938)は、過渡期の少女ゆえの危うさに満ちています。手を頭のうえで組み、スカートで片膝を立てた少女。無垢から性に目覚める手前の危うい均衡と解釈されていますが、モデルが、ばら色の頬をしてフリルの服を着た少女であったとしたら、これほどの緊張感はなかったでしょう。バルテュスは、テレーズの憂鬱な雰囲気に惹きつけられたといいますが、緑がかった不健康にも見える肌色、しかめ面ともとれる表情、質素な服、そして、維持するのに力がいると思われるポーズ。それらによって、あくまでも“少女”という概念が浮き彫りにされているように感じます。

「猫と裸婦」(1948~50)になると、裸婦は、片膝を立ててはいるものの、椅子の後ろにのけぞるポーズで描かれ、不安定な緊張感は感じられません。バルテュスは、猫と自分を同一化し、猫を自身の分身として描いたといわれます。「夢見るテレーズ」の猫は、一心にミルクを飲み、少女との関係性はないように見えます。ところが、「猫と裸婦」の猫は、微笑んで手を差し出し、裸婦も応えるかのように、猫に手をのばしています。後年、少女を描いた「読書するカティア」(1968~76)では、色調は明るく、ポーズも、スカートで片膝は立てていますが、椅子の背もたれに身体をあずけたリラックスしたものに変化しています。創作の変遷を見ることができるのも、国内では最大規模の回顧展ならでは。

さらに、晩年を過ごしたスイスの「グラン・シャレ」と呼ばれる住居に残されたアトリエが再現されていたり、使いかけの絵具や煙草の吸殻の写真や、篠山紀信によるバルテュスと節子夫人の写真も展示されているなど、作品以外にも見所満載の展覧会です。

展覧会のホームページはこちらから
東京都美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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