N・S・ハルシャ展 -チャーミングな旅-

力強い色彩で水玉や網目が無限に増殖する草間彌生(1929~)の世界に対し、インド現代美術界で活躍するN・S・ハルシャ(1969~)は、やわらかな色彩でモチーフを反復して描きます。画面いっぱいにたくさんの人を描いても、同じ人は二人といません。表情、しぐさ、衣服など全て異なる人々が、世界の縮図のように描かれます。

故郷である南インドのマイスールを拠点に、人物や動物、宇宙などのモチーフをユーモラスに、またシニカルに反復して描く、N・S・ハルシャの大規模個展が森美術館で開催されています。
<会期:2017年2月4日(土)~6月11日(日)>

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表現スタイルを確立する契機となった作品は、「私たちは来て、私たちは食べ、そして私たちは眠る」(1999-2001)と題した3点組の絵画。
無数の人々がどこからか、川を渡ってやって来ます。
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人間の根源的な活動である、食べることと眠ること。眠ることは、宇宙と一体になる儀式だといいます。
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「ここに演説をしに来て」(2008)は、6枚のキャンバスに2000人以上の人が描かれています。よく見ると、フリーダ・カーロ、考える人、宇宙服を着た人、鳥人間やゾウ人間なども。
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「ピーチクパーチク」(2014)では、鳥人間が望遠鏡と顕微鏡をのぞいています。宇宙の星など、どこまでも遠くを見る望遠鏡と、細胞などどこまでも細部を探求する顕微鏡。哲学的な世界観なのかもしれません。
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「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」(2013)は、全長24mを超える、大きな一筆書きのような絵画。黒の曲線の中には、宇宙の星がびっしりと描かれています。連続した宇宙空間のようにも、輪廻転生のようにも。
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インスタレーション「空を見つめる人びと」(2010)は、空を見つめる人々が床に描かれ、天井の鏡に映っています。中に立って、上を見上げると、鏡に映った人々といっしょに空を見つめているように感じられます。下の写真は天井の鏡に映った人々です。
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インドの歴史、文化、そして宇宙へのチャーミングな旅。見れば見るほど発見のある旅にいらっしゃいませんか。

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森美術館

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

田沼武能肖像写真展 時代を刻んだ貌

写真家田沼武能(1929~)は、東京・浅草生まれ。小学3年の時に中国と戦争が始まり、中学2年になると軍需工場に駆り出され、教室での勉強など無きに等しかったといいます。私の青春は、戦争と敗戦の混乱で埋まっているとも。

サンニュース社に入社した田沼が「藝術新潮」の嘱託として、日本画の巨匠横山大観の撮影をすることになったのは、21歳のとき。以降、フリーランスになってからも、数えきれないほどの人物写真を撮り続けてきました。文士、芸術家、文化人等、65年以上も「貌」に魅せられてきた田沼にとって、1対1で対象と対峙し、話を聞くことのできる写真は、学ぶチャンスを与えてくれたきっかけ。「貌」には、その人の歴史、その人の心、内面までも写し撮ることができると考えているそうです。

そんな田沼がとらえたポートレート80点を、練馬区立美術館で見ることができます。
<会期:2017年2月23日(木)~4月9日(日)>

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はいつくばってバレンを動かす棟方志功(1953)、五線紙にペンを走らせる武満徹(1967)など、作品を生み出さんとする芸術家の姿。背広に着替えて待っていたという永井荷風(1953)、パレットを手にし、カメラにはにかんだような目を向ける熊谷守一(1954)など、やさしい表情。「オールドパー」が見える棚の前で、煙草「いこい」をくゆらせる吉田健一(1966)、書棚の前で知性が光る柳田國男(1956)など、個性的で「ならでは」の表情。

記憶にある人もない人も、昭和の文化をつくりあげてきた人間ならではの味わいを見せる写真群に、魅せられてみませんか。

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練馬区立美術館

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草間彌生 わが永遠の魂

「世界で最も影響力のある100人」(2016年・米タイム誌)に日本人で唯一選ばれた草間彌生(1929~)は、日本が誇る不世出のアーティストといってもよいでしょう。1957年に渡米し、作品だけでなく、「ハプニング」と呼ばれるパフォーマンスでも話題に。帰国後も、ロンドンのテート・モダンやパリのポンピドゥ・センターでの個展を成功させ、2012年のルイ・ヴィトンとのコラボレーションでは、ニューヨーク5番街にあるルイ・ヴィトンビルのショーウィンドウにものすごい人垣ができたそうです。

そんな草間の初期作品から最新作までが、国立新美術館に集結しています。
<会期:2017年2月22日(水)~5月22日(月)>

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巨大な空間に足を踏み入れると、壁が色とりどりの大作絵画で埋め尽くされています。草間が2009年より描き続けている「わが永遠の魂」と題する連作です。

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1辺が2m近い正方形のカンヴァスには、眼や横顔といったモチーフや、うねる線、さまざまなかたちの色面が描かれ、色鮮やかにメッセージを伝えます。単色を下塗りしたカンヴァスに、アクリル絵具で下書きなしで描いていくのだとか。作品数は500点に及び、本展では約130点が日本初公開となっています。イメージされているのは、宇宙、生と死、そして愛など。少女時代から幻覚や幻聴に悩まされていたといいますから、鮮やかな色合いで表現されてはいるものの、すべてがHAPPYなメッセージではないのかもしれません。ですが、圧倒的な存在感で迫る作品群が、心を満たし、リセットし、何か新しい力を与えてくれるように感じられます。

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1950年代の暗い色合いの油彩は、絶望感が漂うよう。ニューヨーク時代に生まれた、突起物を貼り付けた椅子や梯子は、なぞの生命体を思わせます。そして、「死の海を行く」(1981)と題された、突起物に覆われたボート。「最後の晩餐」(1981)は、赤、緑、黒などを地にした水玉の布の突起物で作られたテーブルと椅子のセット。テーブルの上には、ポットや果物かごが置かれています。展示のラストは、草間の代名詞ともなった「かぼちゃ」(1999)です。

「芸術と制作に命がけで戦っている」という草間は、「死ぬまで戦い続けたい」とも。創造の意欲と芸術への希望に溢れた草間の魂に、心地よく圧倒されます。

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国立新美術館

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DAVID BOWIE is デヴィッド・ボウイ大回顧展

1947年1月8日に生まれたデヴィッド・ボウイは、69歳の誕生日である昨年1月8日に新アルバム「★(ブラックスター)」を発売。その2日後の1月10日にこの世を去りました。70歳を迎えるはずだった2017年1月8日から天王洲・寺田倉庫G1ビルで始まった大回顧展は、2013年に英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が企画したもの。世界9ヶ国を巡回し、日本での開催となりました。
<会期:2017年1月8日(日)~4月9日(日)>

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特長的なのは、ひとりひとりに提供されるヘッドフォンを装着して鑑賞すること。自ら操作する必要はなく、展示物に応じてセンサーが反応し、楽曲やインタビューを自動的に聞くことができます。

随所に展示されており目を引くのが、ユニークで華麗な衣装です。まず最初に出会うのは、山本寛斎がボウイのツアーのためにデザインしたストライプスーツ。「派手な衣装を」と依頼された寛斎が、日本の武士や歌舞伎にインスパイアされて制作したとか。袴が大きく膨らんだようなボリューム感と、等高線のようなストライプが迫力満点。

他の衣装も手がけた山本寛斎だけでなく、ジャケット写真などでボウイを40年以上撮り続けた鋤田正義など、ボウイは日本のクリエーターと積極的にコラボレーションしていました。ボウイが描いた三島由紀夫の肖像画も展示されています。愛読書が「午後の曳航」であったとは驚きですね。

何気なく聞いていた「スペース・オディティ」が映画「2001年宇宙の旅」にインスパイアされていたり、アポロの月面着陸とリンクしていたり、曲の背景が紹介されているのも興味深いところです。

そして圧巻なのは、ショウ・モーメントのセクション。四方の壁面一面に、四角く区切られたスクリーンが並んでいます。あるときはそのひとつひとつに映像が投影され、あるときは全てを連結して大スクリーンに。奥に衣装が展示された区画もあり、透けて見えたり、映像と重なったり。変幻自在に変化しながらライブ映像が堪能でき、音響と映像に感動。思わず、立ち尽くしてしまいます。

他にも自筆の譜面やアイディアメモ、デザイン画など、濃密な展示内容です。

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デヴィッド・ボウイ大回顧展

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ダニエル・ドンデのラグジュアリーアート「ストラディバリ ロック コレクション」

ギャラリーにずらりと並んでいるのは、きらきらと色とりどりのきらめきを纏った何体ものヴァイオリン。赤と白のストライプにバラの造形が施された「America」、銀箔が貼られた本体にブルー系の幾何学モチーフが楽しい「Tribute to Kandinsky」、ゴッホの星月夜やひまわりが描かれた「Tribute to Van Gogh」。どれもがイタリア、クレモナ出身のアーティストであるダニエル・ドンデのヴァイオリンアートです。ダニエル・ドンデのラグジュアリーアート「ストラディバリ ロック コレクション」と題した展覧会が、ノエビア銀座ギャラリーで開催されています。
<会期:2016年11月7日(月)~2017年1月6日(金)>

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どのヴァイオリンも、永遠の名器として名高い「ストラディバリウス」の造形が象られています。イタリアにある小さな町クレモナでは、400年も前からそこに住む職人たちの手で弦楽器がつくられてきました。中でも最も有名な職人がアントニオ・ストラディバリ(1644~1737)です。ストラディバリが製造したヴァイオリンは「ストラディバリウス」と呼ばれ、幻のヴァイオリンとして、かずかずのヴァイオリニストを魅了してきた名楽器です。ヴァイオリニスト千住真理子さんが所有するストラディバリウスは、かつてローマ法王クレメント14世に献上され、その後、フランスのデュランティ家に家宝として200年眠り続け、その後80年をスイスの富豪が所持していたものだといいます。

ヴァイオリンアートを制作したダニエル・ドンデは、このヴァイオリンの町、クレモナ出身のアーティスト。出身地で活躍したヴァイオリン職人アントニオ・ストラディバリをオマージュし、ヴァイオリンに金箔や銀箔、色とりどりのクリスタルなどの装飾を施し、独自のラグジュアリーアートとして完成させたのです。

繊細な装飾は、すべて手作業で作られているそうです。クレモナに工房を構え、スイスのルガーノにギャラリーを持つドンデの作品には、額装作品もあり、ジョルジオ・アルマーニ、フランク・シナトラ、パリス・ヒルトン、シルベスタ・スタローンなど、世界各国のセレブリティたちにコレクションされているのだとか。確かに、息をのむほど美しいきらめきを放っています。

夜間にギャラリーの前を通ると、クリスマスツリーが点灯されています。ギャラリー内も夜間照明に変わって、並木通りにクリスマスの彩りを添えています。外から見るのも美しい展覧会です。

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ノエビア銀座ギャラリー

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心が豊かになるアートを見つけに飛び立つ青い鳥です。

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